わりと音楽聞いていますが
若い頃のように一年中。 いつだって音楽。 ではないです。
聞かない時は全然聞かない。
あるときにスイッチが入ると、ムショウに音と接していたくなって、
我慢ができなくて聞きまくります。
スイッチが入るのは決まって季節の変わり目。
いま「スイッチ」が入っています。秋の真ん中で、冬の予感がして、
冬の音楽が聞きたくなる。
冬の音に囲まれるとゴキゲンです。
新しい音楽も聞いていますが、
「スイッチ」のときは自分に定着した聞きなれた音。
で、
せっかくだから。 おせっかいだから。
私の「冬の音」をレポートします。
個人の嗜好なので偏っていますが。
それって冬?って違和感もあるかもですが。
音楽に風景の距離感、空間の広がりがあるとすれば、
冬は断然この3枚。
チック.コリア 「return to forever」
エレクトリックピアノタッチの最高傑作。
アルバムの写真も秀逸ですね。音とぴったり。
冬の世界のリズム感。静かな躍動感。
フローラ.プリムの声が日だまりの暖かさになってる。
スタン.クラークのベースもいい。
U2 「THE JOSHUA TREE」
空全体を覆っている灰色の雲。荒涼たるイングランドの風景。距離感。
音だけがフルスピードで拡がり散っていく。
そしてまた、遠くからこちらに向かってくる。
U2の一番有名なアルバムですが、良いものはいい。
ライ.クーダー 「PARIS、TEXAS」.サウンドトラック
夏でしょ。って感じる人も。
でも私には、灼熱地帯.テキサスの冬の夕暮れに感じます。
スティールギターの弦の叫びが、
アンニュイなテキサスの、茫漠たる土地を見せてくれます。
ライ.クーダーの中でも屹立したいいアルバムです。
「ハリー.ディーン.スタントンの長い独り言。
たまにナスターシャ.キンスキーが短く答えて...」
も、収録されています。 ビム.ヴェンダースの映画。 観てください。
キャロル.キング 「Tapestry」 「Music」
インドア。それも心地よい部屋でなら、キャロル.キングの声が合ってる。
どちらも初期の頃のもの。
そして、メロディーと詩がストレートに伝わってくる。
ジェイムズ.テイラーとの良好な関係が、寒い冬の暖かい部屋を形造ってる。
昔。「ニューミュージック」っていう棲み分けが生まれました。
発生源の一つはハッピイエンドの4人。細野晴臣.大滝詠一.(松本隆).鈴木茂。
他にも優れたスタジオミュージシャンたちが集まって、
ぞくぞくと歩きはじめた新人とアルバムを作りだした。
いまは大御所の方たちも、ベストな一枚はこの頃に集中しています。
荒井由美 「ひこうき雲」
デビューアルバム。女の子の部屋の中から生まれたようなアルバムですが。
「バ.ス.ルームに ルージュの伝言...」
「ソーダ水の中を〜 貨物船がとおる〜....」
日常の出来事や風景を、詩の言葉に変換するユーミンらしさは
まだ現れていませんが。
ストレートな感受性が暖かい。窓の外で木枯らしが... 見えてきます。
次のアルバム.「ミスリム」も良いんですが、
曲が有名になりすぎていつも聞こえてくる。
だから冬っていう季節感が消失してしまった。
反対に夏だったらアルバム.「コバルトアワー」がいいですね。
吉田美奈子 「MINAKO.FAVORITES」
「MINAKO」 「FLAPPER」 「Twilight Zone」、
デヴューからの3枚がベストですが、
このフェイバリットアルバムはほとんどがその3枚から。
これ一枚ですね。
冬の夜。ハイウエイが一番です。
吉田美奈子っていい曲作りますが、もっと、引きつけられるのは、あの声。
バックミュージシャンも最高です。
細野晴臣のベースがねっとりとうなじに纏わりついてきます。
村岡健のサックスが先廻りしてグルーブし続けます。
時が経ってもいいアルバム。
大貫妙子
「Taeko Onuki Library」.anthology 1973~2003
いつも聴いていますが、冬のドライブが一番だなあ。
大貫妙子って、落ち着く。心の棘が溶けていきます。
きっと良い人なんだ。
アルバムはいっぱいあって、でも、この2枚組みでオーケーです。
デニュー。初期のころからずーっと変わらずに良い音楽です。
暖かいココアを飲みながら。 なんて。
サンタナ 「Caravanserai」
ラテンのリズムが印象のサンタナですが。
一時期。宇宙観にのめり込んでいって、抽象的な音を作っていました。
ジョン.マクラフリンに傾倒していっしょにアルバム作り続けたり。
これはそんなサンタナ、直前のアルバム。
宇宙観いっぱいのサンタナに、オプティミスティックなラテンのリズムはありません。
そして、いいんです。この「Caravanserai」。 永遠に残るアルバム。
細野晴臣 「MEDICINE COMPILATION」
「THE ENDLESS TALKING」 「NAGA」
その音に対するセンスにいつも参っています。
すごいよなー、細野晴臣って。
で、冬になるとこの辺り。 かなり抽象的ですが、
ゆったりしたグルーブ感。雑音のないリズム。ぎりぎり外していないメロディー。
冬っぽいです。
アンダーワールドも好きですが。やっぱり細野かなあ...
夏だったら、
「TROPICAL DANDY」 「泰安洋行」 「PARAISO」の初期3枚。
ハンモックで潮風にゆられて昼寝してるみたい。
春だったら、
「WORLD STANDARD」 「omni Sight Seeing」 「PARADICE VIEW」
もうちょっと抽象音楽を。
キング.クリムゾン
「太陽と戦慄」=「Larks' Tongues in Aspic」、 「LIZARD」
クリムゾンと言ったら、「In The Court of Crimson King」ですが,
冬だとこの2枚になります。
独裁者ロバート.フリップって、天才ですね。
廻りのミュージシャンの固め方も凄い。
ジャズ。マイルス.デイビスに似ています。
私はクリムゾンのヴォーカルたち、独特な声が好きです。
1,2枚目までは、E.L.P.(エマーソン.レイク.パーマー)のカール.パーマー。
かっこよかったです。
3枚目の「LIZARD」はゴードン.ハスケルが男っぽい色気で渋いです。
それに、YESのジョン.アンダーソンも入っている。
「太陽と戦慄」では、ジョン.ウエットンが男っぽい色気路線。
またしても、YESからビル.ブラッフォードがドラムで参加。
アメリカのタイトでシンプルな音でも、私には冬があります。
レオン.ラッセル 「LEON RUSSELL」
レオン.ラッセルが世に飛び出した印象のアルバム。
体中から噴出す、音に対するモチベーションがたまりません。
名曲になってる「A SONG FOR YOU」は、聞くならやっぱり冬でしょ。
ここまで、身をよじるまで、愛を叫んだ詩を私は知りません。
夏には聞けない。かなあ...
ジョン.レノンの「GIVE PEACE A CHANCE」。
1970発表のこのアルバムに入っています。レオン.ラッセルの曲なんだ?
メアリー.ルー.ロード 「got no shadow」
アコースティックギター一本で歌いまくるメアリー.ルー.ロード。
彼女が立っている場所は、ニューヨーク、ミネアポリス、シカゴ....
決して暖かいところへは行きません。
だから、履いているブーツに土は付いていない。
冷たいコンクリートの上で歌っています。
なのに、無邪気に暖かい声が魅力です。
ワンス.ブルー 「once blue」
ワンス.ブルーって何? お教えします。
ノラ.ジョーンズの、あの「ドント.ノウ.ホワイ」を作曲したジェシ.ハリスと、
レベッカ.マーティン(ヴォーカル)のデュオ。ニューヨークで誕生しました。
アコースティックな楽器とジャジーな曲調。
野性的でねっとりしたレベッカの声が絡まっていて、
寒いニューヨークのアパートで録音したようなアルバムです。
寒くなってくると聞きたくなる。
矢野顕子 「JAPANESE GIRL
デビューアルバム。「JAPANESE GIRL」が出た時、ぶっ飛びました。
こんな音楽って? ありなんだ? すげーっ! このアルバムっ!
いまでも輝いています。夏に聞いてもいいけど。
冬、夜中のハイウエイ。ひとり大音量でいく道を切り裂いていると。
自分が何処にいるのか分からなくなります。
「長月 神無月」 「good evening tokyo」 どっちもライブ。
ピアノひとつで童謡や君が代を歌いまくる矢野顕子は、
やっぱり天才なんだなあ。って...
どちらも小さなホールでのライブなので、
自分の部屋に来て歌ってくれているようです。
ハードロック。というよりプログレッシブなものから
レッド.ツェッペリン 「聖なる館」=「HOUSES OF THE HOLY」
これ以前のツェッペリンは、3枚ともまだシンプルが故に泥臭ささがありました。
だけどこれは一歩進んだ感じです。
ジミー.ペイジのギターが、たぶん彼の本来の音? 縦横無尽に走り出している。
メロトロンなど電子楽器も効果的で音に厚みが増しているのに、
透明感が際立っています。
この、ハードなのに透き通った感じが冬です。
一曲目の出だしからやられますよ。
イエス 「危機」=「Close to the Edge」
この頃のプログレッシブ系は
E.L.P.、ピンクフロイド、サード.イヤー.バンドなど、
アルバム一枚でひとつの曲。が多かったですが。
イエス「Close to the Edge」が一番良かったなあ。
いまだに聞き続けています。
イントロのラメっぽい音。無限に拡がる重低音。で、
一気にアルバムの中に入り込んでいきます。
エンディング。小さなセルが弾けるような粒々音。その先に春の予感。
ジョン.アンダーソンの声は、まさにプログレ。
ビートルズ 「ABBEY ROAD」
「Sgt. Peppers Lonely Hearts Club Band」
「カム.トゥゲザー」からの出だしがかっこいいです。「ABBEY ROAD」。
シンプルなのに分厚い音が、ビートルズの円熟を見せています。
後半7曲の一気メロディーはマイ.フェイバリット。
「Sgt. Peppers...」って。ジョージ.マーティンに導かれたビートルズが、
自分たちの知らない音にのめりこんでいって、
その極致に達した瞬間のアルバム。
無限に重ねられた音色が、サイケデリックな世界で爆発しています。
夏じゃないですね。
上原ひろみ 「another mind」 「Spiral」
何かに乗り移ったのか?。狂ったように鍵盤を叩きまくる上原ひろみは、
いったいこれから何処に行くんだろう?。 楽しみです。
キース.ジャレット 「THE KOLN CONCERT」
音と音の「間」をピアノで奏でるキース.ジャレット。
私の私感ですが、
エリック.サティの独特な外した「間のリズム」が西洋とすれば。
「間」が聞きやすいキース.ジャレットは、「和」をイメージさせます。
アルバムの透明な空間が、気温の低さになっている。
ナディラ 「SOUL POWER」
アレスティッド.ディヴェロップメントのヴォーカルを経験したナディラ。
ソウルフルで洗練された声。歌うことに集中した感じが好きです。
曲によって、いろんな切り口を見せてくれます。
なぜか私は寒くなると聞いている。
スタイリスティックス 「setting the scene」
ベスト盤。聞きなれた曲のオンパレード。
ちょっと観光地でお土産。っぽいですが、
これでいいんです。スタイリスティックスが全部、詰まっています。
いいっすよ。スタイリスティックス。
でも。 夏? んっ? ... いっ、いやっ 冬ですよ。 冬。 んっ? ...